Ⅲ捕獲の準備

あらかじめ整備すべき事業環境

 これから捕獲を始めようとする場合、まずは事業者内の体制等を構築することが必要です。捕獲作業を適法にかつ安全に遂行するためには、明確な指示命令系統の構築に加え、管理者及び従事者の法令や安全確保、さらには鳥獣捕獲に関する技能・知識の習得が必要です。

捕獲体制の整備

 捕獲事業を行うには、組織内で下図のような体制を構築しておくことが必要です。特に、捕獲事業に関する技術向上や人材育成において責任を負う統括責任者、現場を統括する現場代理人は明確にし、指示命令系統を築いておきます。また委託事業として捕獲を実施する場合には、現場代理人が発注者側の監督職員と密に協議する必要があります。

安全管理体制

 捕獲は、捕獲従事者はもちろんのこと、第三者にも危害を加えてしまう危険性もある行為です。万が一の事故に備えた補償を整備する、事前に従事者に対して講習会を実施するといったことは不可欠です。

保険の整備

 捕獲作業には、当然ながら林業とは異なる工程があり、それに伴う危険があります。そのため、捕獲事業を行う場合には、それに特化した保険商品を選ぶことが良いでしょう。

※保険等の情報については、広島県の林業普及指導員にご相談ください。
広島県農林水産局林業課林業経営・林業技術指導担当 082-513-3711

参考資料:保険に関する資料

捕獲従事者のみならず、地域住民の安全確保を

 捕獲を実施する際には、事前に地元住民への周知を行う、捕獲時には安全管理看板を設置するなどの安全への配慮は必須です。詳細は、本ページ下部を参照ください。

捕獲事業に係る事前準備

 捕獲事業には、まず、捕獲従事者が狩猟免許を取得することが必要です。そして具体的に捕獲の前には、県又は市町に捕獲許可を申請します。許可申請等には、時間を要することがありますので、前もって作業を進めるようにしてください。併せて、安全管理計画、準備物の手配等が必要です。これらの具体は、以下を参照してください。

狩猟免許を取得する

 鳥獣を捕獲するには、狩猟免許が必要です。また狩猟免許は、3年度ごとに更新が必要です。

参照:広島県自然環境課HP

捕獲手法を体系として理解しておく

 本マニュアルでは、「くくりわな」(下記体系図でいえば「わな」の「非露出型」)による捕獲を推奨し、その手法を細かく解説します。この他の捕獲手法として、銃を用いる場合には、あらかじめ発砲する位置、角度を定める「定点捕獲」とそれらを定めない「非定点捕獲」があります。銃による捕獲は、猟銃を所持、日頃のトレーニング、捕獲具の管理、等に専門性が必要であるため、本マニュアルでは触れていません。また、わなを用いる場合には、「露出型」のわなを用いる手法があります。露出型のわなは、群れの頭数が多い場合には有効な手法であり、県が行った事業でも大型の囲いわなを用いた捕獲を行っています。

捕獲手法の体系図

参考資料:大型囲いわなによる捕獲事例

捕獲計画を立てる

 捕獲許可の申請に際して、捕獲を実施する時期や場所、手法、安全への配慮計画が求められます。そのため、シカがよく出没する範囲のみならず、人の立ち入りの頻度やルート、土地所有者等を事前によく確認しておきます。これらのことを計画書に取りまとめ、所定の様式とともに捕獲許可申請時に提出することになります。捕獲計画立案の際には、特に誤ってツキノワグマが捕獲された場合の対応、捕獲個体の処分方法、所有者の了解など、安全確保を危うくする事態やトラブルになりそうな条件は、事前に市町担当部署とよく協議して詳細を確定しておくことが重要です。

参考資料:捕獲実施計画書(PDF)

地域住民等の安全確保のための看板準備

 捕獲実施地域には、捕獲期間中、地域住民等の主要な動線に目立つ看板を設置します。そしてわな架設位置周辺には、住民等が不用意にわなに近づき誤ってかからないよう、わなを架設していることを明示する注意看板を適切な頻度で設置します。その際、注意看板にはわなにかかってしまった際の解除方法などを明示しておくと良いでしょう。これらを捕獲計画に沿って、十分な数量を準備します。

安全管理看板例
わな周辺に設置(わな1基に対し1枚程度)

捕獲個体の処分方法

 捕獲個体は、鳥獣保護管理法、廃棄物処理法等の法令に沿って、適切に処分して下さい。特に焼却処分や埋設処分については、地元関係者や施設への事前連絡が必要な場合があります。処分方法については、あらかじめ各市町担当者にご相談ください。

捕獲許可を取得する

 被害管理のための捕獲の許可は、各市町に申請します。申請方法や各種様式は、各市町に問い合わせてください。捕獲の許可申請手続きには、長くて1か月程度かかることを想定し、早めに申請しましょう。

※捕獲の目的によっては、広島県への許可申請手続きとなる場合があります。詳しくは、各市町又は広島県自然環境課にお問い合わせください。

リンク:広島県における野生鳥獣の保護管理について – 広島県の野生鳥獣の保護管理ポータルサイト | 広島県 (hiroshima.lg.jp)

捕獲許可申請書様式例(広島県)

効率的な捕獲の第一歩〜機材等の準備~

 設置をしたわなには、標識を設置しなければなりません。(一社)広島県猟友会で購入できるので、架設するわなの枚数分を購入しておきます。

広島県猟友会HP
狩猟免許【初心者】講習会について | 一般社団法人 広島県猟友会 (hiroshima-ryoyukai.jp)

物品の購入
物品販売案内&申込書 (hiroshima-ryoyukai.jp)

わなそれぞれに設置が義務付けられている捕獲プレート(各わなの直近の立木等に設置)

誘引餌

 シカを効率的に誘引する場合には、牧草を固めた飼料(商品名:ヘイキューブ)を用いることが一般的です。ヘイキューブは、JA等で調達が可能です。

ヘイキューブ

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